今の嫁と出会ったとき、
正直もうちょっと薄かった。
付き合い始めてすぐ、冗談っぽく言ったことがある。
「ちょっと禿げとんよね、俺。」
笑いながら言ったけど、
内心はちょっと探りよった。
どう思うんやろって。
嫁は普通に
「別にわからんよ?」
って言った。
その感じが、ありがたかった。
でも同時に、
なんか自分だけが気にしとるみたいで、少し複雑やった。
年月が経っても、
嫁はほんまに気にしてなかった。
帽子かぶっとっても、
脱いでも、
写真撮っても。
特に何も言わん。
「気にしすぎやない?」くらいの感じ。
でも俺は、ずっと気にしとった。
風呂場の鏡も、
美容室の照明も、
上からの光も。
全部チェック対象やった。
その頃、実はプロペシアは飲みよった。
最初は言ってなかった。
あとから
「実は薬飲みよるんよ」
って言ったら、
「そうなんや」
それだけ。
否定もせんし、
変に励ましもせん。
それが逆にありがたかった。
本格的にAGA治療を始めたときは、遠距離やった。
クリニックに通い始めて、
ローンも組んで、
頭皮注射も打った。
でもそれは黙っとった。
なんで言えんかったんやろ。
嫁は気にしてないのに、
自分だけが必死になっとるのが、なんか恥ずかしかった。
嫁は受け入れてくれとった。
でも自分は、自分を受け入れられんかった。
これが一番しんどかったかもしれん。
治療って、髪を増やすためやけど、
それ以上に「自分が納得するため」やった気がする。
誰かのためじゃなくて、
自分のため。
今でも嫁は言う。
「別にハゲてもええやん。」
でも俺は思う。
「いや、俺は嫌なんよ。」
そのわがままを否定せん人と結婚できたのは、
ありがたいことやなと思う。

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